スキージャンプの「to beat」って何?K点・L点超えの意味と風で変わる採点の仕組みをわかりやすく解説

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スキージャンプの中継を見ていると、画面に「to beat」という謎の表示が出てきたり、着地斜面にラインが引かれていたりするのに気づいたことはありませんか?

また、実況では「K点超え!」「ヒルサイズを超えた!」といった表現も飛び交います。

「to beatって何の数字?」「K点とL点って何が違うの?」「風が変わるとスコアも変わるの?」

――こうした疑問を持ったことがある方は、意外と多いのではないでしょうか。

この記事では、スキージャンプ中継がもっと面白くなる英語の用語と採点の仕組みをわかりやすく解説します。

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「to beat」とは?――中継画面に映るあの数字の正体

スキージャンプのテレビ中継を見ていると、選手が飛び出す前後に画面上に「to beat ○○○m」「to beat ○○○.○ pts」といった表示が出ることがあります。

また、着地斜面(ランディングバーン)には、レーザーラインやバーチャルグラフィックで目標地点を示すラインが引かれることもあります。

これらは、計時を担当するSwiss Timingなどが提供するもので、「現在トップに立っている選手のスコア(または距離)を超えるために、この選手が到達すべき地点」を示しています。

つまり「to beat」とは、「首位を倒す(=beat)ために必要な基準」という意味です。

たとえば、2回目のジャンプで最後から2番目の選手が飛ぶとき、画面には「to beat 135.5m」のように表示されます。これは、その選手がその距離以上に飛べば、暫定トップに立てることを意味しています。

実際、2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの女子ノーマルヒルでは、ノルウェーのアンナ・オディーネ・ストロームが最終ジャンプで着地斜面の緑色のマーカーを確認し、「緑のラインがかなり遠くにあったので、それを超えなければと思った」と語っています。

このように「to beat」のラインは、選手自身が飛行中に目視で確認することもある、競技を左右する重要な指標なのです。

K点(K-point)とL点(HS point)の違い

日本の中継でよく耳にする「K点超え」という表現。

この「K点」と、もう一つの重要なライン「L点(ヒルサイズ=HS point)」の違いを整理しておきましょう。

🔴 K点(K-point/Construction Point)

着地斜面が平らになり始める地点で、採点の基準点として使われます。K点にちょうど着地すると60ポイント(スキーフライングでは120ポイント)が与えられ、K点より遠くに飛べばポイントが加算、手前なら減点されます。ノーマルヒルでは1mあたり2ポイント、ラージヒルでは1mあたり1.8ポイントが加減されます。着地斜面の両側に引かれた赤いラインで示されるのが一般的です。 

🟡 L点(HS point/Hill Size point)

K点よりさらに下方にあり、安全に着地できる限界地点を示します。「HS(Hill Size)」はこのL点までの距離で定義されます。2004年にFIS(国際スキー連盟)がジャンプ台の分類基準をK点からHSに変更しましたが、採点計算には引き続きK点が使われています。選手がL点を大きく超えて飛ぶ状況が続くと、安全のためにジュリー(審判団)がスタートゲートを下げるなどの措置を取ることがあります。

2026年ミラノ・コルティナ五輪のプレダッツォ会場では、ノーマルヒルのK点が98m(HS107)、ラージヒルのK点が128m(HS141)に設定されています。

つまり、K点は「得点の基準」L点は「安全の限界」と覚えておくとわかりやすいでしょう。

「to beat」の値は風やゲートで変わるのか?

結論から言えば、「to beat」の値は選手ごとに変わる可能性があります

その理由は、スキージャンプの最終スコアが単純な飛距離だけでは決まらないからです。

2009年にFISが導入した風補正(Wind Compensation)ゲート補正(Gate Compensation)の仕組みにより、各選手の最終得点は飛んだときの条件によって調整されます。

💨 風補正(Wind Compensation)

向かい風(ヘッドウインド)は選手の浮力を増して飛距離を伸ばすため、ポイントが減点されます。逆に、追い風(テイルウインド)は不利に働くため、ポイントが加点されます。 

🚪 ゲート補正(Gate Compensation)

スタートゲート(助走路の出発位置)が高いほど助走スピードが上がり飛距離が伸びやすくなるため、ポイントが減点されます。逆にゲートが低ければ加点されます。ジュリーや各チームのコーチが、風の変化や安全を考慮してゲートを調整することがあります。

つまり、ある選手が追い風の条件で飛んだ場合、風補正でポイントが上乗せされるため、同じ距離を飛んでも得点が変わります

その結果、「to beat」として表示される目標距離も、次の選手が飛ぶ時の風やゲートの条件に応じて微妙に変化するのです。

テレビ中継で「距離では負けているのに得点では上回っている」という逆転現象が起きるのは、まさにこの補正システムのためです。

なお、研究によれば現在の風補正は完全に公平とは言えず、特に向かい風の補正係数は不十分である可能性が指摘されています。条件の変動が大きいほど補正の精度が下がる傾向もあり、FISにおいて補正式の見直しが議論されています。

スキージャンプの採点を構成する4つの要素

ここで改めて、スキージャンプの総合スコアがどのように計算されるかを整理しておきます。

📏 ①飛距離点(Distance Points)

K点を基準に算出。K点着地で60ポイント。それより遠くに飛ぶほど加点、手前だと減点されます。 

🎨 ②飛型点(Style Points)

5人の審判がそれぞれ0〜20点で採点し、最高点と最低点を除いた3人分の合計(最大60点)が加算されます。飛行中の安定性、テレマーク姿勢での着地、アウトラン(減速区間)の滑走が評価対象です。

 

💨 ③風補正点(Wind Compensation)

向かい風で減点、追い風で加点。選手ごとの実際の風速データに基づいて計算されます。

 

🚪 ④ゲート補正点(Gate Compensation)

スタートゲートが高ければ減点、低ければ加点。ジュリーやコーチの判断でゲートが変更された場合に適用されます。

総合スコア = 飛距離点 + 飛型点 + 風補正点 + ゲート補正点

個人戦では通常2回のジャンプが行われ、2回分の合計得点で順位が決まります。

つまり、最も遠くに飛んだ選手が必ずしも優勝するわけではなく、スタイル・風・ゲートを含めた総合力で争われるのがスキージャンプという競技です。


まとめると、中継画面に表示される「to beat」は「首位の選手を上回るために必要な目標」を示すものであり、風やゲートの補正がある以上、その値は条件次第で選手ごとに変動しうるものです。

K点は採点の基準点、L点(HS)は安全限界のラインであり、この2つを押さえておくだけで、中継の見え方がぐっと変わるはずです。

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、女子ラージヒル個人や男子スーパーチームなど新種目も加わり、スキージャンプの熱がさらに高まっています。

次の中継を見るときは、ぜひ「to beat」のラインと風補正の動きにも注目してみてください。